私はよく、農家さんからのお問合せで、こんな声をうかがいます。
・自分はまだ農業の経験が浅いから、農産物を出しても売れると思えない。
・サラリーマン生活を辞めて就農したいけど、「農業はもうからない」って聞くし、難しいんじゃない?
なるほど、確かに今の時代、「農業はもうからない」というのは、常識のようになっています。この言葉が、新規就農したい20~30代の農家さんの心理的な壁になって、就農を難しくしているというのも確実にあるでしょう。
また、経験豊富なベテランが作る農産物の方が、安定して、美味しいものになるんじゃないか。そういうものをふつう人は選ぶんじゃないか、というお悩みも、分かります。
しかし私は、この記事でご紹介する川西智広さんと出会い、「いや、農産物を販売するのに、ベテランじゃないといけないってことはないな」という思いを強くするようになりました。
予約開始から1週間で10件以上の注文を獲得。
お客さんから喜びの声が続々!
farm Springboard(ファームスプリングボード)の川西智広さんは、鳥取県岩美町で就農されてまだ数年の、若い農家さんです。主な生産物はトマトやキュウリ、ほうれん草など。
川西さんは元々、農業を仕事にしておられたわけではなく、鳥取県の方でもありません。
ご実家も、農業とは関係がなかったので、本当に一からのスタートです。
でも川西さんの野菜は、直売所で常に大人気。
川西さんのトマトを求めて、直売所を何件も探して回る方もいるほどです。
そんな川西さんが、上のようなホームページを作ってネット販売を始めたところ……。
1.トマトのネット販売を始め、予約開始から1週間で10件の予約注文を獲得。
川西さんのホームページが完成し、トマトの予約受付を開始されたところ、Facebookのつながりを中心に、わずか1週間で、トマトに10件以上の予約が入りました。
2.販売ページ作成後1週間で、自然検索で商品が売れる。
ふつう、ページが作られたばかりの状態では、いきなり自然検索で商品が売れることはありません。
しかし、川西さんのトマトの魅力を紹介する販売ページを作成してわずか1週間、Googleやyahooの自然検索でも、商品が売れました。
3.サイト開設2か月で、複数キーワードで検索1~2ページ目を獲得。
川西さんのホームページは、googleやyahooで検索をすると、「鳥取 トマト 通販」や「トマト 通販」などの主要キーワードでも、1~2ページ目に表示されるようになっています。
4.お客さんから、たくさんの喜びの声が。リピート購入も!
トマトを食べたお客さんから、続々喜びの声が届きました。
「2歳の娘がお皿に残った汁まで飲み切った」
「今まで食べてきたトマトの中で一番美味しい」
などなど。
画像を載せていますが、いい感想ばかりですね!
また、川西さんのトマトを気に入って、繰り返し購入(リピート購入と言います)してくれる人もできました。
リピート購入を増やすことは、ネット販売ではとても大切。
素晴らしい第一歩を踏み出されています。
いかがですか。
川西さんが、農家としてはまだまだベテランの域でなくても、十分な成果を出しておられるのが分かっていただけると思います。
では、川西さんは、どうやってネット販売1年目から成果を出してきたと思いますか?
ここからは、川西さんと高口の具体的なかかわりを通して、川西さんが成果を上げてきた販売方法や、川西さんの考え方、ホームページの作成過程についてご紹介します。
「もっと多くの方に鳥取県や岩美町の良さを知ってもらいたい」という目標に向けて
川西さんの目標
川西さんには目標があります。
それは、育てている野菜のネット販売や、情報発信を通じて、
もっと多くの方に鳥取県や岩美町の良さを知ってもらいたい。遊びに来たり、移住したりしてもらえるようにしたい
ということです。
私(高口)との打ち合わせの際も、すぐにこの目標を教えてくださいました。
川西さんのように、目標をしっかりさせることは、とても大切ですね。
いつでも見返して、ずれないように行動を修正できます。
ホームページの制作期間や打合せの様子
制作期間は約2か月。
オープンは4月下旬です。
高口は、実際に鳥取の岩美町にもうかがいつつ、日々の連絡は電話やチャットを使いながら、制作を行いました。
日中は農作業しておられるので、いつも夜の電話になりましたが、明るく気さくに打合せに応じてくださり、とても楽しかったです。とくに打合せは回を増すごとに雑談が多くなり、「あれ~、今なんの話をしてたかな?」と笑いが起きることもしばしばでした。
現在提供している商品
⇒いわみとまと
甘さだけじゃなく、「うまみ」にこだわり、実のぎっしり詰まった大玉桃太郎トマトです。
打合せのときに初めていただきましたが……あまりの美味しさに、トマト観が変わるくらいの感動がありました。甘いトマトというのはよく聞きますが、「うまいトマト」というのは、初めてだったかもしれません。
川西さんは、ふつうに「桃太郎トマト」として販売するのではなく、「岩美町をもっと多くの人に知ってもらえるように」という願いをこめて、あえて「いわみとまと」と名付けておられます。
出張相談にうかがいました。
3月/コンセプトの相談やハウス内の撮影
私が岩美町に、最初にお邪魔したのは3月ごろ。
「高口さんにぜひ岩美の良さを知ってもらいたい」と、風光明媚な浦富海岸に連れて行っていただいたり、美味しい海産をいただいたり。ありがとうございました。
浦富海岸は、写真のような峻険な岸壁と、刻々と色の変わる美しい日本海が臨める絶景です。
お家にお邪魔して、まずは農園のホームページのコンセプトをうかがいました。
農産物の良さや農園の目標をしっかり言葉にしていただけるよう、コンセプトシートをお出しし、直接記入していただきました。
川西さんは、丈夫な野菜を作るためにカルシウムを与えていることや、土壌中の窒素成分にまでこだわり、エグみを減らす工夫をしていることなどを教えてくださいました。
トマトハウスを見せていただきつつ、写真や動画の撮影を行いました。
トマトはまだ小さかったですが、収穫までの作業の様子や背景を載せることはとても大切なこと。ホームページ作成は、できるだけ、生産者とお客さんの間の壁を取り除き、心理的な距離を近づけていくことがポイントです。
川西さん、初めは緊張した雰囲気で動画撮影に臨んでおられましたが、その後、驚異的に上手になられます。
5月/販売直前のトマトを撮影、動画コンテンツ、今後の販売方法をアドバイス
この日は、トマトの収穫に合わせてうかがい、写真と動画の撮影を行いました。
二度目の岩美町。3月と比べて、一気に暑くなり、ハウスの中にも元気いっぱいのトマトが大きな実をつけているのが見られました。
私は事前に構図や角度など、撮りたい写真について、ノート20ページ分にわたり計画し、10本近くの動画撮影も行う予定でうかがいました。
写真撮影で大切にしたことは、いかに「いわみとまと」が他のトマトと違うのかを、しっかり伝えること。
とくに重さや大きさ、実のぎっしり感を伝えたかったので、水を張った鍋に沈めていただいたり、ふつうのトマトと比べてみたり。
結局12本の動画を撮影し、写真も数百枚になりました。
岩美町という絶好のロケーションを生かし、トマトを差し出している川西さんの写真や動画を撮らせていただきました。
トマトの切り口を見せ、「ぎっしり実が詰まっている」という特徴を伝えられるような写真を撮りました。
このように、切り口を見せてホームページで紹介することは、とても大切なことです。
あなたも写真撮影の際には、ぜひこのように、みずみずしい切り口を見せられるように紹介してくださいね。
完成したホームページ
「うまみ」があり、実が大きくぎっしり詰まったトマトを紹介。商品ページを作りこむ。
いわみとまとが、他のトマトとはどう違うのか。
ここをしっかり伝える必要があると思ったので、徹底的に商品ページを作りこみました。
これまで撮影してきた動画や写真を詰めこみ、差別化を行いました。
「ここまでやっているトマト農家は、他にいませんよ」
と川西さんに言っていただけるほどのページになりました。
⇒いわみとまと商品ページ
就農や、ネット販売にいたるまでのストーリーを紹介。
川西さんが就農にいたるまでの道のりを、物語形式で、ホームページ内で紹介しました。
こういう紹介ページが作れるのは、ホームページの大きな強みです。
川西さんのお人柄が伝わるように、心をこめて書きました。
⇒ファームスプリングボードとは?
トマトの成長をこまめに記録して紹介。
ホームページでは、トマトが成長していく様子を、お客さんにも伝わるように写真と文章で紹介しています。
赤くなった状態のトマトだけでなく、トマトができるまでの様子も紹介することで、よりお客さんに安心感と、親しみをもってもらえるようにしています。
こちらのページは検索でも上位に表示されています。
⇒いわみとまと成長記録
思いの伝わるブログ記事作成。
川西さんは、ブログの更新も熱心に行っておられます。
毎日の農作業の様子や、どんなこだわりをもっているのかということや、岩美町の紹介など。
分かりやすく、顔の見える情報発信を心がけておられ、Facebookでもいつもたくさんの「いいね」がついています。
⇒farm Springboard公式ブログ
お客さんとの間に壁を作らない、川西さんの考え方
他にも、farm Springboardさんの公式youtubeチャンネルを作らせていただいています。
↑クリックすると移動します。
このように動画や写真をふんだんに使ってホームページを作らせてもらったわけですが、ここまでやるには、もちろん川西さんのご協力が不可欠でした。
私は岩美町にうかがった際、川西さんに、こんなことをお聞きしました。
「川西さんは、ご自分の顔を、ホームページなどで出していくことは大丈夫ですか?」
それに対して、川西さんは明るく、このように答えてくださいました。
「もちろん大丈夫です! 顔を出していくことは、お客さんに信頼してもらうために必要だと思っています」
私はそのとき、川西さんのトマトが直売所で大人気になる理由が分かった気がしました。
ネット販売でさっそく成果を出されているのも、こういう川西さんの考え方にも、理由があると思うんですよね。
お客さんとの間に壁を作らず、自分からどんどん前に出ること。
私は、これを非常に大事なことだと考えています。
川西さんは、ご自分が広告塔になることをためらいません。
動画にも積極的に登場されるし、写真にもうつります。
直売所では、川西さんの顔写真入りのポップを商品に取りつけて、販売しておられるそうです。
ネット販売などの直売で成果を上げるには、
「見に来てくれるお客さんと販売者の距離を縮め、信頼を得ていくこと」
が大切です。
物理的な距離はなかなか縮まるものではありませんから、縮めるべきなのは「心理的な距離」ですね。
ホームページを訪れたばかりのお客さんは、不信のカタマリです。
「本当に商品が届くのか?」
「いいこと言ってるけど、本当に美味しいのか?」
「騙されないのか?」
こういう不信を抱えながら来ているので、少しでも信じられないと思う要素があると、購入にはいたってくれないんですね。
ですから販売者は、一つずつ、ていねいにお客さんの不信を取り除いてやる必要があるんです。
そのために、自分の顔を出すことほど、相手を安心させることはありません。
ただ文字を連ね、商品写真を載せるより、よほど説得力をもちます。
直売所でも、生産者の顔写真を載せているからこそ、安心感に結びついて、購入してもらえるんでしょう。
あなたも実際にfarm Springboardさんのホームページを見てみてください。
明るく、さわやかな笑顔の川西さんが、たくさん登場しておられるのが分かると思います。
高級感をウリにしようとして、あえて顔を見せず、お客さんとの間に距離を作る方もいます。
しかし、それではお客さんとのやりとりは少なくなり、リピート購入に結びつけていくのは難しくなります。
それよりは、お客さん一人一人との信頼関係を作る方に力を入れるべきです。
川西さんのように、販売者がお客さんに歩み寄る姿勢を見せること。
これが農家さんのネット販売成功の近道といえるでしょう。
「ベテランじゃないといけない」
なんてことは、まったくない。
川西さんのような若い農家さんとお話していると、販売を成功させるのに、農業のベテランである必要は、まったくないな、と感じます。
もちろん、まったく農業の経験なしに、いきなり川西さんのように人を感動させる野菜を作ることはできません。
川西さんは既存の農法に頼るだけではなく、土づくりから自分なりに研究し、こだわって野菜を育ててきたからこそ、美味しいトマトを作ることができたんです。
こう言うと、少し不安になるかもしれませんね。
「いやいや、自分にはそんな目立ったこだわり、ないんだけど……」
と。
そう思われる方は、周りの人に野菜や果物をあげて、「美味しい!」と言ってもらった経験がありますか?
あなたがもし、周りの人から「美味しい!」と言ってもらった経験があるなら、あなたの商品は、人を喜ばせる、つまりお金になるだけの価値があるということです。
あなたが日々当たり前のようにやっていることでも、お客さんは案外知らないものです。
誘引や摘果という言葉を聞いても、ほとんどの非農家さんはちんぷんかんぷんでしょう。
そこで工夫していることや、頑張っていることを伝えれば、それがあなたのこだわりになります。
若い農家さんでも、十分お客さんを喜ばせることができます。
むしろ、若い農家さんだからこそ、柔軟な発想で、エネルギーあふれる販売方法が実践できるとも言えますね。
川西さんは、トマトのロゴをあしらったTシャツを着て、イベント会場に出かけていき、試食をしてもらう、などという、たいへん面白いこともやっておられます。これこそ柔軟な発想の、エネルギーあふれる販売方法ですね!
今後の販売がますます楽しみな、川西さんのご紹介でした。
川西さんと対談を行いました。
岩美町にうかがった際に、こんな動画を撮りました。
13分程度で、あっという間に見られます。
ネット販売が不安、イメージがもてない、という方は、川西さんの考え方を知れば、勇気がわいてくるはず!
00:00 川西さんと高口の自己紹介
00:48 トマトのネット販売を始めたキッカケ
01:54 知人でも何でもなかった二人の出会い
04:46 毎日が「楽しい!」と言える川西さんの考え方
05:24 楽しんでチャレンジする人生
05:55 ホームページ作成の打合せは雑談ばかり!
06:49 1か月間、ネット販売をやってみて
08:08 ネット販売を続けていくために必要な目線
08:33 川西さんがやっていた「ある方法」で、サイト作成後すぐに売れる
09:24 トマトだけじゃない!? 今後の販売計画
10:05 高口の30年の人生で一番美味しかった「いわみとまと」
11:12 ネット販売のイメージがもてず不安な方へ
川西さんは、twitterでの情報発信も、とても素敵です。
自分の商品にお客さんがつき、感想の声が届いたり実際にその人とやり取りしていると、「稼ぐため」と意気込んでいた想いが、いつの間にか一番は「お客さんのために」という考えに、シフトしていることに気付いた。
— 若手農家 川西智広 (@BravoTom) 2016年7月10日
だが、決して稼ぐことの手を休める事はないだろう。稼ぐと言う事は、それだけの価値を世の中に提供しているということだから。商売をしてお金を稼ぐことは全く卑しいことでも何でもない。それが、地域を、ひいては日本を、豊かにする一つの強力な手段なのだから。
— 若手農家 川西智広 (@BravoTom) 2016年7月10日
↑川西さんの言葉、とても素敵だと思いませんか?
【お願い】この記事を読まれて、川西さんに直接「ネット販売について教えてください」「弟子にしてください」と声をかけるのは、ご迷惑になりますのでおやめください。どんな風に販売すればいいのか、どんな商品を出されているのか気になる方は、ぜひ川西さんが販売をされている時期に、商品を買ってみてください!
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